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2019年4月 7日 (日)

コレクションの持続性の話

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またいつものJLC批判である。つまらん記事とは思うがどうしても書きたくなったのであえてアップする。

クロノス82号の記事は多くの特集で読み応えがあり、そのなかで特に共感したのがBovetP.ラフィさんの言葉である。

「私たちがコレクションに盛り込みたいのは、耐久性が高いこと、視認性の高いロジカルなデザインを持つこと、そしてロジカルな機能と、コレクションとしての持続性を持つことです。コレクションは継続しなければならない。それが顧客の信頼と忠誠を得ることになります。」

ああ、この人は作り手の立場でありながら顧客の、いちマニア心を本当に理解しているなと感じた。心配なのは、コレクションのラインを増やしたかと思うと、売れずに消滅させるJLCにその言葉を真に理解する日が来るかどうか、ということである。

コレクションの一貫性や継続性は本当に大事だ。JLCでもマスターやレベルソは、(その過程では紆余曲折あるものの)ある程度一貫性は保っている。しかし過去のイデアルやAMVOXは消滅したし、レベルソの中でもスクアドラはあっさりと消滅した。最近の自動巻ラインも怪しい。IWCも一貫性という観点からは、例えばダ・ヴィンチのラインなどデザインの継続性を一切無視して新シリーズ化したりするし、GSTの系譜もよくわからない感じでアクアタイマーに収斂している気がする。インヂュニアもデザインを過去何度か一気に切り替え、しかも継続性がないなど、各コレクションの持続性は怪しいと思う。

ラフィさんの言葉は、ボヴェの製品を買い、愛でるために大きな安心感を与える。これは買い手の立場に立って物事を考えてみれば容易に想像がつくことだ。

残念な具体例をあげよう。今シーズンで一番衝撃を受けたのは、JLCがジオフィジックのシリーズを早くも捨て去ったことだ。この製品を購入した人はどう思うのか。限定と謳っていたモデルならともかく、スタンダードモデル全てのディスコンであり、後継が全く出ないのである。それは野心を持って売り出したものの、期待したセールスをあげられない不人気なモデルということを会社として認めたということに他ならない。購入者の気持ちを全く考えていないと思われるのだ。(決めたのは同じ82号にインタビューがあったこのCEOなのか。)

それどころか、ジオフィジックというレジェンダリーな名称を使い捨てにしてしまったメーカーの考えの浅はかさには信じられない思いだ。私がとりわけこの名前に執着しているだけかもしれないが、今後JLCがもしこの名前を使いたくなったとしたら、今回の黒歴史を自ら「なかったこと」にするのか、それとも「一定程度の成功を収めたものの、惜しまれつつディスコンにした」などと話を嘘っぽく美化する必要があるはずである。伝説や伝統を極めて重んじ、そしてそれらを宣材に使うのが常套手段のこの業界のなかで、自ら首を絞めることになるのではないか。なお予言しておくと、このままではポラリスも危ない。

もう一度ラフィさんの言葉に戻る。「コレクションは継続しなければならない。それが顧客の信頼と忠誠を得ることになります」この逆を平気でやってしまうのが今の「伝統的なスイス高級メゾン」である。

気がつけばJLCIWCもリシュモングループで、CEOは両方ともいわば雇われ社長だ。求められるのは売り上げの拡大、それはわかる。しかし売り上げが伸びないので伝説を使い捨てにしてもいいという権限を持っているとすれば、その権限を持たせてしまったリシュモントップのジェロームも批判の対象とするべきなのか。一方同じコングロマリットでもランゲは違う。継続性と持続性に長けており、どのモデルを買おうにもほぼ不安がない。究極はロレックスである。おなじペットネームをもつ、より改良された時計を出し続ける。まるでポルシェみたいだ。だから安心して買えるし、いつの時代に買ったものでも価値がある。今の市場の評価も納得であろう。

ブランド戦略には各メゾンで大きな違いがあり、それらは永い目で見れば結果として大きな差が出てくることは間違いない。改良し刷新するべきところはする、しかし伝統的にタッチーなことは慎重に進める必要があるのだなあと、改めて思ったのである。ボヴェは一貫していいものを作ってきている。それにはやはり、このトップの存在が大きいと思う。

 

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