« APのCODE 11.59 | トップページ | Patek Philippe Golden Ellipse »

2019年4月27日 (土)

単結晶サファイヤの話

Fullsizeoutput_232c

時計用風防がプラスティックから単結晶サファイヤに置き換わり始めたのは、凡そ1970年頃からである。当時のサファイヤガラスは、分厚い単結晶に育てるためには時間と大きな設備が必要であり、現実的な製品として、最初に時計用の風防に用いられたものは薄くフラットなものであった。一方で、この時期は腕時計業界にとってどのような時期かというと、

・クオーツ腕時計が出現したのち急速にコストダウンが進み、大量生産が出来るようになった
・機械式腕時計にとっては大きな打撃となり、製造数が大きく落ち込んでいく
・特に高級な腕時計は薄型化が進んだ

薄型化の流れの中で、単結晶サファイヤは薄くても強度があるため、高級腕時計にこぞって風防として採用され始めた。しかしまだ単価が高く、高級なものにしか採用できなかったとも言えるだろう。この時期に世に出た代表的な薄型腕時計として、ロイヤルオークやゴールデンイリプスなどがあり、それらは設計時から、いずれもサファイヤガラスの採用を前提としていると思われる。すなわち厚さが6~7mmクラスの薄くフラットな時計である。

薄型イコール高級、しかも風防はフラット。この条件を前提としてデザインされた高級時計にとっては、フラットな中にどうやって高級感や立体感を出していくかが課題であり、高度な次元で課題を解決されたものが今も名品として残っているのは、衆目の一致するところであろう。

なお1990年代以降、EFG法の発明・発展によって、時計用の分厚いサファイヤガラスが現実のものになっていく。国内サプライヤーとしては主にセイコーに供給している二光光学などがある。そして2010年代後半に入ってから、ようやくボックス形状のサファイヤクリスタルが一般的になってきた。これは2010年前後から始まった復刻時計ブームと微妙にリンクしており、オリジナルではプラスティック風防だったものが復刻版でサファイヤに置き換わることがようやく出来てきている。特にここ2~3年で一気に採用が進んだ裏には、顧客ニーズに対応する柔軟性向上と納期の早期化、均質化、低価格化などの波が確実にあり、技術上のブレイクスルーがあったのかもしれない。

風防という時計の単なる一つのパーツだけ取ってみても、工業的な時代背景と密接に結びついており、それらは時計を考察するバックボーンとして重要な情報である。

|

« APのCODE 11.59 | トップページ | Patek Philippe Golden Ellipse »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« APのCODE 11.59 | トップページ | Patek Philippe Golden Ellipse »