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2016年7月19日 (火)

Zeitwinkel 082° エナメル ”グラン・フー”

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Zeitwinkelの国内正規修理担当のZenmaiworksさんによる、伊勢丹でのデモに参加してきた。そこで見たのがタイトルの時計であり、大いに感銘を受けたのでこのエントリを書いている。

ポイントは以下の4点。
(1)アラビックフォントを持つホンモノのグラン・フーエナメル文字盤とそのデザイン
(2)分厚い青針、カウンターウェイトの無いセンターセコンドと、針飛びを抑えるための機械の独自機構
(3)強烈に手間の掛かった仕上げが施された機械
(4)これらをトータルで実現しようとしたF氏のセンス

乱暴に言えば(4)にすべて帰着してしまうのだが、それでは文章化する意味のないものになってしまうので、特に上の3点について書いてみたい。

(1)青文字のアラビックフォント、これはまず一目でこの時計の特徴だと誰が見てもわかる。時計の歴史的に古来のフォントではなく、このメーカー独自のもの。ユルい感じが独特であり、好き嫌いは分かれるかもしれないが、機構や機械は深刻な時計であるにもかかわらず、そうは見せない表情を持つ。このバランスが良い。

(2)針は非常に厚く、立体的であるにもかかわらず、正面から見るとかなり繊細である。そして色は文字盤上の各種レターやロゴと統一されている。そしてなによりカウンターウェイトの無いセコンドハンド、これに尽きる。このような形状の針を回す場合、特に針飛びがあれば全く幻滅である。ある種の抵抗を与えることで針飛びを抑えることは大抵のメーカーが実施しているが、特にカウンターウェイトが無いこのような秒針への対応は深刻である。これを実現させるための独自機構が、二重になった歯車であるがこれがどのように作用するかは言葉にし辛い。一般的には部品間の摩擦を生じさせて針飛びを抑えるわけだが、それは回転運動を伝えるうえでのロスになると ともに、定期的な部品交換が必要となるものであるところ、Zeitwinkelでは第二の歯車を同軸に通し、そこで回転抵抗を与えるという方法で解決している。そしてこの機構とセットではじめて”スッキリとした秒針”が実現し、エナメル干支と三本の青針によってこの清潔感・清涼感のあるデザインが成り立つのである。デザインと機能・機構が一体となっているのだ。
デザインのこだわりは随所で見られるが、特に分厚い針同士と文字盤が密着しており、この精緻なたてつけは見事である。わずかにドーム形状の風防内面とダイヤルとの間隙はわずかであり、ここにぎっしりと針が収まる。高級時計の文法通りだ。

(3)機械のそれぞれのパーツは、強烈に仕上げてある。もう10年ほど前から某L1ですら、地板の香箱の入る部分はペルラージュがない。Zeitwinkelの082°は、強烈に細かいペルラージュが病的なまでに施されている。地板やブリッジばかりでなく、部品や部位によって鏡面や筋目模様など仕上げは異なり、およそすべての目につくところがいちいち手で仕上げてある。ここまで手間の掛かった機械が入った新品の時計は、今やこの値段ではほとんど手に入らない。

(4)すべてを承知で、これらを意図してプロデュースしたのがF氏だと聞いた。時計のあらゆる部分に精通したうえで、全体的な統括をしないとこの製品は生まれ得なかった。

それがすべてである。
多少興味がわいた人には、ぜひ一度手に取ってみることをお勧めする。

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