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2016年6月28日 (火)

自動巻きレベルソについて

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レベルソは去年と今年、大々的にモデルチェンジが敢行された。ケースサイズが整理され、同時に小さいケースがクオーツムーブメント、中程度より大きなケースが自動巻きの機械となったことが従来との大きな違いだ。これまでは手巻き系が主体で、その中心的な機械は、筆舌に尽くしがたい(と勝手に筆者は思っている)名機822系であった。
それが自動巻きの960系の機械にリプレースされることになった。

今回敢行されたレベルソのラインの整理は、はじめに「毎日巻かなくていいようにすること」すなわちクオーツか自動巻きありきだと思っている。すでに定番化している「手巻きの」レベルソをなぜ自動巻きにしたかったのか?これについて私の想像はロジックを欠く。ロレのような定番化を目指した、というくらいしか理由が思いつかない。時計の進化は確かに手巻きから自動巻きへ、なのだけどなぜレベルソをその方向性に乗せたがるのか理解不能である。しかしとにかくJLCの首脳陣はそう考え、意思決定をした。

新ラインアップを見るとJLCは、101を除けば最小サイズの手巻きの名機Cal.846をレベルソに納めることはないと割り切っているようであるから、小さいサイズはすべてクオーツになる。それよりも一回り大きいサイズからが自動巻きとなり。これは960系を使うことしか考えられない。なぜなら、これが今現在JLCが生産可能な最小の自動巻きの機械であるからだ。
Cal.960は1995年にMaster Ladyに搭載されるために開発された機械で、直径21mm、厚さは3.95mm(ほとんど4mm)である。
ここでこの機械を入れるためのサイズの検討が始まり、従来のクラシックサイズでは幅が足りずにやや大きくした「ミディアム」になったと想像する。しかし狙っていた「ミディアム」は、文法に則れば従来の「クラシック」よりもやや大きくなりすぎてしまう。JLCはここで大胆な手法に出た。それは、なんと黄金律を崩してしまうことであった。縦を切り詰めてなんとか従来の「クラシック」に近い大きさに仕上げた結果が、第一作の「レベルソ・クラシック・ミディアム・デュエット」であった。
実物のプロポーションは、長辺が短くなるとともに自動巻きの機械を搭載したことでケースが厚くなり、なんかずんぐりした時計になってしまっている。ただ程度としては、それ単体ではおそらく認識することは少なく、従来のクラシックやビッグなどの手巻き時計を横においてみるとハタと気が付く程度だ。
とりあえずこの時計に関しては、その流れを無視すれば良くできた時計である。レベルソはこうあるべし、などとゴタクを並べているような筆者のような老害Geekの戯言を無視すれば、これはとても良くできた時計である。作りも仕上げも各パーツも立てつけもデザインも素晴らしい。そして何よりも重要な観点は、JLCが売っていく相手は老害Geekがメインではない、ということだろう。JLCがターゲットにしているのは、これからの時計好き(マニアでもGeekでもない)なのである。
 そして老害Geekとしては、今回の判断が英断だったとなるかどうか、非常な興味をもっている。
(でも過去にボロカスにけなしたスクアドラは大失敗したよな・・・イデアルもそう)

PS. この一連の新作群に関する明確な特徴がもう一つある。それはケースバックおよびラグの形状だ。グランド・レベルソ・ウルトラスリム・トリビュート系はまだ真っ直ぐであるが、グランド・レベルソ・レディ・ウルトラスリム・デュエット・デュオ(もう名称が訳わからん)あたりからラグ部分を下げることにトライしはじめている。そして昨年の自動巻き第一作のレベルソ・クラシック・ミディアム・デュエットではかなり明確にラグを下げており、ケースバックも真っ直ぐではなくラグに滑らかにつながるように加工している。今年のレベルソ・ワンもそうだ(この時計は実に素晴らしかった・・・私が女性なら一目ぼれレベル)。このケースバック及びラグの形状は1930年代のレベルソの形に非常に近く、そもそも手首への座りがいまいちであった90年代復活後の歴代レベルソのウィークポイントを、何とかしたいと思ってトライしていることだと思う。この方向性は歓迎されるべきものだろう。この点もしっかりとかかなければフェアじゃない。

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2016年6月21日 (火)

Seiko Prospex Marine Master 1000m SBBN025 "Darth Tuna"

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Seiko Prospex Marine Master 1000m SBBN025 “Darth Tuna”

20年ぶりくらいにクオーツの時計を買った。いわゆるTunaである。
昨年度セイコーのダイバーは50周年を迎え、限定品が多数出るとともにほぼすべてのラインがリニューアルした。SBBN013が従来のクオーツ1000mであったが、それが本モデルに置き換わったわけである。

セイコーのダイバーは初めて手にしたわけではなく、実はスキューバマスター200m(液晶デジタル)を潜るときに以前愛用していた。ログを取るのに便利であり、これとアラジンプロをダブルでつけていたのが私の15年位前のダイビングスタイルであった。なぜダブルだったこというと、当時のアラジンは時計機能がなく、En/Ex時間と水温の記録ができなかったためである。スキューバマスターはそれをうまく補完してくれた。

さて時は流れてダイビングコンピュータに時計機能は当たり前になり、ログ機能も充実しているためにダイコン一つで過不足なくなった。ダイバーズウォッチはもはやダイコンさえあれば無用の長物となったわけである。さてそれではダイバーズウォッチはどこに向かうのか?ということになろうが、セイコーの売り方は相変わらず飽和潜水での使用に耐える(すなわちファンダイブにはまさに無用の長物)、究極の性能を持った潜水時計である。
しかしこれは時計好きなダイバーには刺さるのだ。

前置きが長くなったが時計を見てみよう。
外胴モデルはセイコーのオリジナルであり、インナーケースへの衝撃や傷を回避するだけでなく、ベゼルの誤操作を防ぐためのカバーも兼ねている。1000mのTUNAの材質は、外胴がジルコニアセラミックで、ケースがチタンだ。腕時計としては新しめの材料が使われており、これは非常に目的に沿ったものだ。
チタンは金やステンレススティールに比べて比重が小さく、時計は大きさの割に重くない。また秀逸なのは腕への装着感で、ラグと呼べるものはほとんどなく、外胴の内側に隠れるような位置からシリコンのバンドが生えている。この位置は非常によく考えられており、巨大な時計にもかかわらず私の細腕にもよくフィットするし、つけていて回ることもなく安定している。以前のウレタンバンドよりもシリコンバンドは柔軟性が高くより柔らかであり、それがさらに快適な装着性をもたらしていると思う。Tunaはデカいから無理、などと思わずに気になるなら試してみるべきである。
 外胴の内側にあるベゼルはダイバーのアイコンであり、デザインは極めてオーソドックスであるが質感・回転感触もソリッドで固めであり、プロ機器として納得の出来である。
 風防はサファイヤであり、物凄く分厚い。インデックスや針、デイデイト表示窓以外の部分はとにかくポリシー通りのまっ黒である。「深海の黒いやつ」だからね。
 針は50周年モデルで従来の伝統的な形から、時針は矢印、分針はペンシル形状に代わっている。形の趣味はそれぞれだが、旧来のものがセイコースタイルだととらえている向きは多いので、出た当時あまり評判は良くなかったように思う。しかし海中での視認性は新型が勝る。機能優先でのデザインチェンジであり、職業ダイバーにとっては歓迎されるべきことであろう。しかしユーザは職業ダイバーよりも圧倒的に一般人が多いので、プロの意見は地下に潜ることになるかもしれない。
 デイデイト表示は従来と変わらず、英語と漢字表記を選べる。いずれにせよ土曜日が青、日曜日が赤であり、職業ダイバー以外の多くはこの時計は週末用であろうから、この色は感覚的に週末気分を盛り上げるのに一役買う。これはかなり効果的であり、同意してくれるユーザも多いのではなかろうか。
 ダイヤルは艶が押さえてあり、針とインデックスの視認性はとにかく最高である。ルミブライトのインデックスは針、ベゼルの▽とともに強烈に薄青く光る。夜光はダイバーにとって非常に重要であり、わずかな光でも蓄光するし、光の強さも十二分である。
 セイコーのダイバーはPROSPEXシリーズに整理されたので、ダイヤルにはあまり評判の良くないXマークが印刷され、竜頭も立体的なSからXのエッチングに変わった。確かに竜頭は私もSの従来のもののほうが好みである。ではなぜSBBN013にしなかったのかというと、真面目に潜りに使いたいので新品を買いたかった、ということと夜光の性能アップによる理由が大きい。
 さて今回なぜクオーツかということに触れていなかった。日常でもダイビングに使うにしても、実用ではTunaはクオーツが最高であるというのが私の結論であり、以下に理由を列挙する。
(1) 竜頭操作による浸水のリスクに鑑みると、竜頭の操作(解放)回数は少ないほど良い。私はほとんど週末しか使わないから機械式やスプリングドライブでは平日に必ず止まることになる。よって使うたびに時刻合わせで竜頭を操作することになる。
小の月から大の月に日付が変わるときが一年に5回あるが、クオーツでは、ねじ込み竜頭を開放するのは理論上この5回だけで済む。5年の電池交換サイクルでたったの25回だ。竜頭及びチューブへのダメージは極めて少ないはずだ。
(2) 当たり前だが正確であり、かつ7C46という、ぶっとい針を回せる高トルクのSEIKOならではのクオーツは魅力的である。当然輪列には石も入っている。7Cはこれと9Fにのみ現存する、時間の微調整機能を持つ。その調整単位は0.26秒/日である。
(3) 電池交換1回無料券がついている。すなわち10年間メンテフリー(!)だ。

この時計は機能もデザインも突き抜けており、TunaはTuna以外に同じものはなく、所有してみて想像以上に満足度が高い。ガシガシ使えるプロの道具というのは、身に着けていて気持ちがいい。
セイコーダイバーは50年の歴史があり、国内ばかりでなく海外モデルも含めるとそのモデル数は莫大である。微妙なモデルもあるが多くは魅力的であり、最近ではサードダイバーの復刻が海外モデルとして出たばかりである。バンドを変えても良いし、防水性が怪しくなるがドーム風防へのチェンジ、針のチェンジなどカスタマイズで楽しむマニアも多い。セイコーダイバーに特化したマニアは世界中に存在し、スイス製時計マニアなどとは別レイヤーに潜んで活動をしている感がある(PuristSやTimezoneではなくWatchUSeekとかWorn&Woundとか)。なんとなくパネライの楽しみ方に近い気もするが、ベースの時計がパネライよりも相当Affordableであるからして、ゴロゴロと持っているようなマニアも多い。こちらも意外と沼である。それもかなりディープだ。

最後に一言、やはり時計は面白い。

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