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2013年6月19日 (水)

Royal Oak 4100ST

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RoyalOak(4100ST)を手に入れた。78~79年頃の製品だ。よく知られているとおり、ジェラルド・ジェンタ氏によってデザインされた時計界の金字塔である初代RoyalOak (Ref.5402ST)は72年にリリースされた。スポーツウォッチであり、かつ夏でも快適に着用できるドレスウォッチとも言えるSSのブレス時計だ。この時計のキモは、ブレスも含めたその薄さによる装着感と、薄さの中にも明確にある立体感と高級感だ。立体感や高級感はどこから生まれてくるのか?という疑問に対する一つの答えが、この時計にある。八角ベゼルの表面はサテン仕上げ、六角のボルト及びベゼルの側面がポリッシュ。ベゼル側面は緩やかな曲面を持っている。平たい時計本体から伸びたラグは一定の角度で垂れ下がり、そこから滑らかにつながる「薄い」ブレス。さらには各パーツの圧倒的なクオリティ。それがロイヤルオークである。

39mmの初代RO(5402ST)のラグの角度から、ジェンタ氏の腕の太さが大体分かる。これが快適につけられるのはある程度太い男性の手首だ。一方、これを快適に装着できる太さの腕を持つ日本人男性はある程度制限されるだろう。やがて細腕の男性にとって幸いなことに、APはやや小さめのROを作ることにした。それが4100STだ。全体的なデザインバランスは5402STとほぼ一緒。時計の薄さを実現するために、5402STは稀代の名機JLC920を用いた。それでは次作となるやや小さめのROに何を用いるか?結局はやはりJLCだ。かくして889(厳密に言うと900の改良版)が4100STに収まることになり、この機械の持つ薄さを最大限に生かして時計本体の薄さが実現された。

5402や4100などのロイヤルオークと一般的なスポーツウォッチとの決定的な違いは、時計とブレスの薄さであると考える。時計の薄さが装着感に与える影響は、非常に大きい。シャツのカフサイズが左右同じでも、問題なく収まる程度の薄さである。薄さのほかに、装着感に寄与するもう一つの大きな要因は、スチールバックであることだ。グラスバックは、ほぼ確実にスチールバックよりも厚くなることから、時計の重心も腕の中心から離れることになる。さらにガラスは汗をかくとペタペタと腕にくっつく。これらを解決するのは、結局は古来のスチールバックであることだ。889(AP2123)は鑑賞に耐える名機であるが、普段使う時計に対して優先されるのは装着感だと思う。

さて、889を採用したことは4100STに明確な利点をもたらした。あまり気づいている人は居ないと思うが、ROという時計のデザイン上重要な一つの因子として「デイトの位置」があると考えている。72年の5402STは、JLC920(AP2121)の外周いっぱいに存在するデイトリングのおかげで、ダイヤルの右側、見返しにかなり近い位置にある。これがROにとってベストなデイト位置だ。

4100STについても、ケースサイズに見合う889を採用したお陰で、ダイヤルの右端、オリジナルジャンボとほぼ同じバランスに収まっている。これがきわめて重要だ。インデックスや針の比率など、厳密なバランスを保ってROはデザインされている。これが崩れては、事実上ジェンタのデザインしたROではなくなるのだ。
全てのROに共通する八角形ベゼルや六角スクリュー、サテンとポリッシュ仕上げ、タペストリー文字盤等の共通項は除いたうえで、ロイヤルオークをロイヤルオーク足らしめる私の考えるポイントを列挙する。
・ケース・ブレスの薄さ
・デイト窓の位置(見返しに近い位置)
・針・インデックスの長さとバランス
これらは全てのロイヤルオークの共通項ではない。

さて、4桁リファレンスのRO以降を見てみよう。
ジャンボ(14202→14802→15002→15202)は完璧だ。なぜなら機械が920(2121)だからだ。唯一異なるのはスチールバックからグラスバックになっていることで、単純な装着感が異なること、おそらくケースバックの厚さもわずかではあろうが厚くなっているはずだ。しかしこんなことを差し引いても現行なら全く疑いなくベストバイである。ブレスやバックルの作りも改良を重ねており素晴らしい。時計全体のクオリティが、今現行で売られている時計の中では圧倒的だ。特に昨年度の40周年記念で復刻されたロイヤルオークは、APロゴが文字盤下側に移動したことによって、12時位置の2本インデックスが復活している。実に素晴らしいことだ。

次にジャンボではなくミドルサイズを見てみよう。系譜は私が調べた限りでは、
4100→14486→(56023?)→14700→14790,14800
となる。大きさは14486までが35mmで、以降が36mmだ。
14486STに関しては、4100STと変わらないケースサイズだが、なぜか文字盤のインデックスが非常に短くなっている。(短くないものもweb上で見られるが、それが4100なのか14486なのか不明。)なぜこうなったのかよく分からない改悪で、針とインデックスのバランスが完全に崩れている。唯一の救いは、ブレスのバックルの部分の作りがよくなったこと。ここは改良と言える。

これを引き継いだ14700,14790STはどうだろう。14790はおそらくこれまでに最も売れたROではないか。これは14486から1mm強ケースサイズが大きくなって36mmとなった影響もあり、デイト位置がダイヤル中央にわずかに寄っている。また残念なことにインデックスの長さが短くて、この点はオリジナルROとは大きく異なる。ブレスもわずかに厚くなり、全体的に厚みが増して現代的なリファインがなされ、特にバックルはよくなった(厳密には2段階で改良されたようだ)が、バランスとしてはオリジナルからやや離れた結果となった。
14790
http://timetunnel-jp.com/AP14790SToo0789st092491971.html インデックスが短いでしょう?

なおほぼ同時期に出ている14800はブレスではない革モデル。これは長いインデックスを持つがラグの様式がオリジナルROとは異なるデザインで、趣味が分かれるだろう。
ちなみに14790に積まれた機械は改良され36石となった889/1であり、APでは2225と言われる。889/2が乗ったものがあるかどうかは不明だが、14790の生産年からして後期は889/2ではないかと考えている。

もう一段小さいサイズを見てみよう。
APがすばらしいのは、さらに小さいROも作ったことだ。
機械式の系譜は、56048→14470→15000と考えている。クオーツモデルはこのケースサイズが主体で、56143→56175→56271となる。
一点残念なのは、機械式ではJLC960(主に女性用の自動巻き)が採用されたため、デイト位置が極端に内側になってしまった。インデックスもこの時期のRO全般と同様、どうにも短くてバランスが悪く感じる。

一方、より小さい女性用の29mmサイズでは、960がケースサイズに比較的マッチしていて好ましい。インデックスの長さもやや短いものの、アンバランスには見えない。
なお29mmの機械式、クオーツモデルの系譜は次のとおり。
機械式:8638 → 78638
クオーツ:66131→66270, 66800(革), →67370→67470
さらには20mmサイズの67075というクオーツモデルも存在する。

一方、時間+デイト以外の機能を持つロイヤルオークとしてデイデイト、デイデイトムーン、デュアルタイム、アニュアルカレンダー、永久カレンダー、クロノグラフなどが主に36mmサイズで展開された。永久カレンダーは39mmが主なサイズとなるが36mmも存在する。

デイデイトムーンもインデックスは短いが、インダイヤルがあるためそれほど違和感はない(25594などの長いインデックスのモデルも有り)。一方、デイデイトやアニュアルカレンダーのインデックスは短すぎる。デュアルタイムも短いが、後に出る39mmのデュアルタイムよりもあっさり顔なのと、インダイヤルの針のクオリティが高く、デイデイトムーンと合わせて個人的にはなかなか好きな時計だ。2000年頃に出たニックファルドはたしかゴルフクラブがおまけでついてたと記憶。限定モデルはロイヤルオーク全体で非常に多い。

さて話は一気にここ10年程度の話(2000年代)に飛ぶ。APは3120を自社(パピ)開発し、いよいよROに積むことになる。正直に言うと3120をROに使ってくるとは思っていなかったので、私にとっては意外だった。

新時代のROである15300STは、かなり現代的にリ・デザインされたものとなった。一例を挙げると、長円であったインデックスや針が長い八角形になるなどというものだ。インデックスの長さはオリジナル程度に戻ったことは賞賛されるべきと思う。それぞれのパーツは圧倒的なクオリティを持ち、現代のROとしてみればすばらしい時計であるが、デザインやバランスという観点ではジェンタデザインのオリジナルとは似て非なるものである。

3120はやや小さい機械なのでデイト位置はかなり内側に寄ってしまった。また機械の厚さによって時計全体が厚くなり、ブレスもそのバランスでデザインされているため厚くなった。現代的といえばそれまでだが、スポーツウォッチでありドレスウォッチであるというROの特徴に鑑みると、特に後者の特徴が明らかに薄れている。スポーツウォッチとして立ち位置が明確であるオフショアがあるにもかかわらず、そちらに寄った時計を出したことの意味がよく分からない。間違いなくROなのであるがジェンタが志向したROではないのである。同時期に出た39mmデュアルタイムも同様の印象だ。

さらに最近出た15300の後継にあたる15400。相変わらずパーツそれぞれのクオリティはすばらしいが、デザインバランスがオリジナルとは最早別ものといえるほどかけ離れてしまった。機械は当然3120で、ケースの大きさが41mmもあるのだから、こうなってしまうだろう。グラスバックがとても小さく見えるケースバックである。デイト位置の残念感は涙を誘う。なぜケースをここまで大きくする必要があるのか?オフショアがあるのになぜここまでやるのか?私には理解出来ない時計である。
15400
http://www.evance.co.jp/shop/item/detail_21099.html 悲しいデイト位置。

最後にAUDEMARS PIGUETのロゴについて。5402、4100、14486まではAとPの文字が大きくない旧ロゴである。なぜか内輪では「悲しい文字盤」と呼ばれているが、このロゴ、AUDEMARSとPIGUETの長さが黄金比である、ということをとある人から聞かされて知っている。
ジェンタがデザインしたのかは知らないが、ジェンタが認めたロゴであることは確かだ。最近のロゴのほうがカッコいいかもしれないが、私にとって”旧ロゴであること”はかなり重要なのである。

やはりジェンタが手がけたオリジナルこそがROとするならば、それ以降のROはジャンボを除けば正直バランスに欠ける印象だ。現代的に解釈され、リ・デザインされたROも悪くないが、インデックスやデイト位置、時計やブレスの厚さに着目すると、オリジナルとの乖離が目立つ。
私は細腕であり、この大きさが丁度よい。故にやっと手に入れた4100STが愛おしい。

追伸しておくと、ここ数年のAPの販売戦略はかなり派手だ。私も芸能人を多数招待しているようなAPのパーティーに参加したこともあるが、正直ゲンナリした。Vintage Pieceが陳列されていたりするがこういった貴重な品が脇役となってしまい、スイス三大というイメージは感じられない。例えばアークヒルズやパークハイアットなどで行われているJLCの顧客向け販売会や発表会のほうが、はるかに立ち位置は落ち着いており、「高級時計メゾン」然としている。

最後にオマケ。これ調べるのに一番時間かかった。

[私が調べた中でのサイズ別リファレンス一覧]

Time+Date
Automatic
29mm 8638(2062) → 78638(2062)
31mm ?(2150)
33mm 56048(2711), 14470(2130), 15000(2140),
35mm 4100(2123)→14486(2131?)→36mmに (56023,cal2506)
36mm 14700(2125)→14790(2225) ,14800(2225,革,ロングインデックス)
(14790にはロングインデックスのVer14790.ST.O.0789.ST.01もあり。)
39mm Jumbo line5402→14202→(25402?)→14802(Jubilee)→15002→15202
39mm 15300(3120)
41mm 15400(3120)

限定の一部
14802(2121,PT,1999)(2121,ST,Jubilee,1992)
15100(2225,Foundation)
15201(2121, Jumbo, the PuristS 10th anniversary edition,Tantalum,2011)

Day Date
36mm 25572(2124/2810,1983, Long Index)
39mm 26330(2324/2810 15300Index)

Day Date Moon
36mm 25594(2224/2825 ST.01はLong Index)

Perpetual Calender
39mm 25554(2120/2800,1981,Short index)→25654(2120/2800,short)→
25820(2120/2802)
36mm 25800(2141/2806)

Dualtime
36mm 25730(2229/2845,short)
39mm 26120(2229/2845, 15300Index)

Quartz
20mm 67075(2601 Quartz)
29mm 66131(2508,Quartz), →66270(2610,Quartz), 66800(2610 Quartz, 革),
→67370(2710,Quartz)、67470(2710,Quartz)
33mm 56143(2508, Quartz), 56175(2612,Quartz),
56271(2610,Quartz)

以上!

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