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2007年4月28日 (土)

Master Compressor Extreme LAB

Mastercompressorextremelab2 LABについて。まさにこれはコンセプトウォッチであり、Non-Lubricant Systemと言う着眼点は素晴らしいと思う。しかし潤滑不要、というのが即OH不用に結びつくのかどうか?というのは分からないので、「Non-OverHawl Watch」とは言い切れないのであろう。本当はこれを言いたい筈であるが言えない理由は、まさにテストしてみないと判らない、実際は最低10年くらい動かしてみて、各部の状況がどうなっているのかを確認して見ないことには言えない筈なので、「潤滑不要システム」と言っているということであろう。嘘ついていないだけ良心的。
このNon-Lubricant Systemを何によって為し得たのか?という解決策に関しては、「新素材」に尽きる。この素材の表面の平滑性や硬さなどで摩擦をごく小さく抑えている、という当たり前の解決方法であろう。従来はここを流体潤滑していたわけであるが、ドライ(個体面摩擦)でも大丈夫にした、というそれだけ。この手の分野すなわちトライボロジの世界では、金属ではベアリング業界なんかが発達しているわけだが個体面摩擦の分野では、多分工業的な需要でやはり超精密加工業会とかなのであろうか?液体潤滑では多分にメカノケミカル的な影響もあるはずであるが、素材だけの勝負になると純粋に物理的な研究のみのような印象がある。
このCal.988Cには、すでに量産機に採用されているテクノロジー(自動巻きローターのセラミックローラーベアリング、コレットに溶接されたヒゲぜんまい、など)も盛り込まれている。ガンギはこの手では常套手段となった感のあるシリコンガンギ。
それ以外に目を引くのは
Easium™・・・Swiss innoboost社が開発したセラミック系新素材。
Mos2 coating  ・・・こちらは米国で主に研究されている分野のよう。Surface and Cortings Technology誌73号に発表された論文(1995)などこの辺にどっちゃりとあるので興味がある方はぜひ。
ということで、この時計はどこにどのような新素材を用いるか、コーティング技術を用いるかということがツボであり、また単に質量を減らせば摩擦は減ると言う当たり前のことを実践するため、それぞれのパーツにもこれでもか、と軽量化が図られている。
筆頭はマグネシウム製のアンクルである。これはトゥールビヨンゆえライトアングルであるが、2.5倍チタンよりも軽いそうで、これも運動エネルギーが小さくなれば衝撃も小さくその分摩擦も減る、ということである。
この時計は自動巻きであるため、メインスプリングのスリップにも考慮されている。グラファイト粉をメインバレル中に入れて解決していると言うことで、個体あるいは流体摩擦ではなく粉体摩擦ということだ。
ヒゲについてはかなり従来路線で、コレットを溶接している最近の標準仕様で、ブレゲヒゲである。シリコンヒゲでないのは意外と言ったところ。ここはBreguetの方が進んでいるのか、あるいはあきらめたのか?
さて肝心のテンプである。
今まで時計のテンワの形に関しては、懐中の時代から大きな変更がなされてきていない、という見解が一般的であろう。個人的に大きな変更だと思ったのはドゥべトーンの3本テンプのアレであるが、こちらはさらに強烈である。ミーンタイムスクリューが2対のみのI型のバランスだ。円形では無いからこれはテンワではなく「バランス」としか表記できない。形状材質はイリジウムプラチナを採用し、表面部性的な空気抵抗(摩擦)を減じているとのことだ。インパクトあるねこれは。しかし、思い起こせばアーンショウのクロノメーターのZバランスに戻って行きすぎた形とも取れなくない。空気抵抗というファクターを考慮しての結果という観点では全くことなるが。

デザインは、いかにもコンセプトウォッチである。私には多分にリシャール・ミルの影響を感じ(カーボンの使い方・ローターのデザインや黒ベースの機械、新素材のサンドイッチなどなど)、2番煎じ的なディテールは好きでは無い。しかし全体的なバランスと言う点ではオーセンティックな丸型のケースと普通にラグがあることなど、まあ悪くは無いのかな、といった感じである。赤い竜頭はどうしても許せないが。

JLCは将来的にこれを商業ベースに乗せるつもりなのであろうか?しかし彼らのビジネスは、アフターでの儲けについても数年前に真剣に取り組んだようで(Vintageのサービス代金が2~3倍になった)、ここも儲けの源泉と考えていることは間違い無く(Richemont系全部かもしれない)、このシステムがその儲けの源泉にならないシステムであれば真剣に売るつもりにはならないであろう。
よって現段階ではその技術力の誇示としての役割であろう。もし売るとすれば不用になる、あるいはインターバルが長くなるOHでの儲け分を販売価格に上乗せすることはすぐに考えるであろうし、今現在は付加価値も高く、法外な価格でも十分な需要はあるであろう。今後の展開が注目である。個人的にはこれがマスターGTのケースにはいったようなものがリーズナブルに出れば、それは欲しいと思う。(渦巻きじゃなくならないとリーズナブルにはならないであろうが)

あまり関係ないが昨年キャビネNo.5で新型脱進器を発表したAP。今年は複雑機構を省いて普通のミレネリーとしてリリースしたのはたいしたものだと思う。オメガのCo-Axほどまでこなれる可能性はほとんど無いであろうが、手の届く価格になったらかなり興味があるのも事実だ。デッドセコンドはやはり魅力が大きいのである。

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コメント

今回も力作ブログですね。(素晴らしい!)
でも私は、JLCはこの潤滑油不要を結構真面目に追求すると思っています。どこかのインタビューで、JLC社長が「JLCは高い技術力をリーズナブルな価格で提供する路線を貫く」みたいな事を言っていました。まさに、SSのマスタートゥールビヨンはその一例ですね。LABも、昔のマスター程の値段にはならないでしょうが、数年の内に出てくると思います。
又、リシャール・ミリの影響は結構あるのかもしれません。傷の付き難い新素材(まさにOHの磨きも不要になる?)、そして軽量化、オンオフどちらでも使えるデザインの万能性。絶対にJLCも狙っていると思います。そのために、今、散々苦労してクレームになりながらも、AMVOXでチタンケースの製造練習をしているのだと、個人的には考えています。

投稿: T2 | 2007年4月28日 (土) 11時08分

コメントありがとうございます。
LABを見てきた某氏は「いまいち」との評でした。
詳しくは聞いておりませんが、煮詰まり切っていないのかな?と思います。でもこれを真剣に押し進めてくれるならJLCはまだまだ捨てたもんじゃありませんし、そうであってくれるような気がして参りました。
ちなみにクロノは結構良かったみたいです(Ptで700万だそうですが!!)
それと銀座の半地下の店で社長と話し込んできて、結構面白いお話を聞くことが出来ました。近いうちにお目にかかれればその辺もお話ししたく思います。

投稿: レベルソ好き | 2007年4月29日 (日) 17時03分

半地下って、Sマンですかね?是非とも聞きたいです。もしお時間があれば、連休明けにでもお願いします。

投稿: T2 | 2007年4月30日 (月) 11時12分

Sマンです。
色々と考えさせられてしまいました。連休明けにでもぜひお願いいたしますのでまたメールさせていただきます。

投稿: レベルソ好き | 2007年5月 3日 (木) 00時26分

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