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2006年7月26日 (水)

スウォッチグループの話

ニコラス・G・ハイエックはスイス人ではなくレバノン人である。レバノン人(移民系だが)といえばカルロス・ゴーンなわけで、二人の共通点といえば超一流の経営者ということだ。

なんでこんな話を書く気になったのかと言うと、最近読んだ経営系の本(スライウォツキーの)に、ハイエック親父が出てくるのである。どんな話かと言うと、極度にまとめるとプロフィットモデル(ビジネスモデル)には、いくつかパターンがあるがスウォッチグループは典型的なピラミッドモデルを形成してプロフィットを生み出している、ということだ。
これは、スウォッチという誰でもどこでも買える大衆製品を持ち、さらにティソ、ラドー、オメガからブランパン、ブレゲという頂点まで、よどみなくピラミッドが構築されている、と言うことだ。このモデルにはそのほかにもスウォッチの限定品によるビジネスやブランド戦略など、スウォッチグループは経営戦略的に見てもものすごく語られるべきグループである。われわれ時計好きにはジャック・ウェルチよりもなじみがある分、そう思う。ちなみにハイエック親父は法学と経営学の学位を持つ。

さてスウォッチといえばこのようなプロダクトのピラミッドモデルが有名なようであるが、経済学者たちがあまり気づいていないであろう、われわれ時計好きが気にするネタがETAの話だ。このように経営的手腕を発揮するハイエック親父は、これまではエボーシュ連合を傘下に置くことでまちがいなくスイスの機械式時計産業を牛耳ってきたわけだが、完成品しかグループ外に出さない、ということを明言したのが約2年前。これまでETA頼みの図式を20年以上かけて構築してきた挙句、今度はグループ外に出さない戦略。おそろしく考えられている。ハイエック親父がETAをベースとしたプロフィットモデルの構築に関して種まきしてきたことが、いよいよ刈入れの時期に来たわけだ。当然グループ外のそれぞれのメゾンは自前で何とかする動きとなり、事実そうなっているが製造コストはまちがいなくETAの方がこなれているはずで(なんと言っても歴史と生産個数が違う)、しばらくというか永続的にエボーシュの価格をコントロールできると踏んでいるのであろう。おそらく市場はハイエック親父の意のままだ。なおETAのキャピタルはスウォッチ本体の1/20以下だ。

もう一つの例は、コーアキシャルの大衆化である。特許料その他ダニエルズ博士とはどういう契約かは知るべくも無いが、多分オメガのロレ超えを目指したのでは無いか。戦略があたっているのかは人によって感じ方が違うであろうが、アニュアルレポを見る限りオメガ社の売上げは間違い無く伸びているようだ。まずいアフターについて、OH期間を延ばすことによってそれが知られるリスクを減らせるという副産物もある(?)し。

さて、息子のマーク・ハイエックにはブランパンを適当にやらせていたようだが(キャピタルも微小でグループ全体から見るとたいした規模ではない)、ピラミッドの頂点たるブレゲのテコ入れはここ最近でかなりのレベルだし、親父の野望に刻一刻とこの帝国は近づけられているわけである。

当たり前であるが時計は彼にとってビジネス以外の何者でも無く、本当に時計が好きかどうか全く疑わしいわけで(銀座のビルに温泉作るようなビジネスこそ彼が得意とするものかもしれないし)、今までさかんに言われているアフターのまずさもビジネス然としすぎているからかもしれない。ブレゲがいくら魅力的でも、そのダイヤルの向こうには親父の戦略が見え隠れする(というかモロ見えな)のだ。なおピラミッドモデルは、下層よりも頂点のほうが多大なプロフィットを生み出すことになっている。しかしこのような完璧な構図を作っても、アフターの問題こそが同巨大グループのほころびのような気がする。ああ、駄文になってしまったが勿体無いのでアップしてしまおう。

参考までに、NIVAROX-FARにETA, Frederic PiguetにトリオビスのVALDAR、ダイヤル製造のRUBATTEL & WEYERMANN、素材屋のCOMADUR、針屋のUNIVERSO、電気屋のEM MICROELECTRIC、さらには水晶発信器製造会社から電池屋まで持っているのは本当に凄いですな〜。
一応アフターサービス専門会社のSWATCH GROUP CUSTOMER SERVICE(通称SGCS)ってのもありますが。
ブレゲよりもここのテコ入れが先決ですよハイエックさん。

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2006年7月20日 (木)

e-bayネタですが

このre-finishのあまりのいい加減さにワロタ。Jl

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2006年7月18日 (火)

ヒゲと等時性について

唐突にヒゲと等時性について書く。不勉強なので賢者のつっこみをバシバシいただければ幸いである。
さて以前N師は、@Unitasで「主ぜんまいがほどけてくると、振り角が落ちて遅れ方向になる」と書かれている。これは現代の時計では大方そのような傾向を示すのは間違いないと思う。
一方、「時計修理読本」には「等時性ヒゲ」について、平ヒゲはテンワの回転によってヒゲの中心がずれる。結果天真ほぞに側圧が生じ、これがぜんまいの力を回転させる力以外に消費させる力になり、結果振り角が落ちると遅れ方向になる。ブレゲーヒゲはこの偏心が無いため側圧が生じない。その結果振り角が落ちると進み方向になる、と書かれている。
冒頭、現在の大方の時計は、と言うのは主に平ヒゲの時計のことなので、これはその通りかと思う。では巻き上げヒゲは振り角が落ちると進むのか?ということについてであるが、これも私の自前の時計では大方そのような傾向を示している。
ここで、等時性ヒゲというのはどういう意味かというと、すなわち振り角が落ちても遅れも進みもしないヒゲ、であり、ヒゲ形状の調整の範囲でこれが作成されるのであろう。すなわちisochronizm調整というのはこれを指している、という理解であるがこれで良いのであろうか?
また、JLCの腕時計はジオフィジック以外ほとんど平ヒゲであるが、これがどういうわけかぜんまいがほどけてくると手持ちのレベルソは全部進み方向になる。これはすなわち以前私がジャック・アンドレ・ロシャ氏に確認した内容に通じるものであると思う。
「平ヒゲでも特に外端の形状を工夫することによって巻き上げヒゲに近い特性を持たせることが出来る」とどこかで読んだか聞いたかしたような気がするが、平ヒゲ得意なJLCはこのあたりのノウハウがあるのでは、と思う。
ではブレゲーヒゲは、なぜ振り角が落ちると進み傾向になるのか?について考えてみると、「振り角が小さいほど空気抵抗が少なく、すなわちロスが減る分進み方向になる」と理解しているのであるが、これは愚答であろうか?
ちなみに、等時性誤差を生む要因として、(1)巻込角、(2)緩急針のアオリ調整、(3)ブレゲヒゲの場合、巻上げ部の角度、などがあるとのことである。特に(2)いついては奥が深い(方アオリ、アオリ無し、両アオリの各状態の話、高級時計のアオリの調整など)。
これについてはまたいずれ。

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