« 2006年4月 | トップページ | 2006年6月 »

2006年5月30日 (火)

BENZINGER

Benzinger@Unitasにアップさせていただいた通り、Benzingerが届いた。本編Webに早速インプレをと思っているのだが、とりあえずβ版をblogにアップさせていただく。

<Introduction>
ドイツオーダー時計第二弾ということで、孤高の彫屋(?)であるJochen Benzingerさんに女性用の時計をオーダーした。H1に続いて家族の記念時計である。
さてJochen氏は日本ではあまり知られていないと思うが、メールをやり取りしてみるとレスポンスは早いしかなりお茶目なキャラで、ぜひ会ってみたいと思わせる好人物である。本職は「エンジンターンドエングレービング屋」というのがふさわしいか。同氏の作る時計は個性的で、そのほとんど全てがオーダーメイドである。また良く知られている事実としては、マーティンブラウンやVdKの時計などにエングレーブしているのは彼である。ちなみにドンブリの機械の文字彫りおよびコックの彫りも彼だそうで、実はすでに彼の仕事は何度も目にしていた訳である。
彼のスタイルは以下のようなものだ。まずベースとなるムーブメントを入手。ETAはもちろんPUWやオメガなども豊富にあるらしい。機械は持ち込みも可能で、0型懐中なんかのサンプルもある。そして彼がどのようにエングレーブするかをデザインし、機械をバラしてから加工、組み立て。ここは相当融通が利く。文字盤も材料で買ってきてデザイン後、彼がエングレービング。タコ印刷は外注であろう。ハンドもおそらく外注であるが、これが驚愕に値するほど出来が良い。ケースと竜頭、これも外注。ケースはフォルツハイム製で非常にきっちりと出来ている。最後に風防も外注であろうが、相当良いものを使っている。
メールでやり取りしながら仕様を決め、彼がアッセンブルしてくれるわけだ。

<Outside>
さてこのFlowerPowerとJochen氏が名づけた時計は、実は彼が愛妻にプレゼントしたモデルでもある(彼のは金無垢ケースとのことであるが)。まさにその名のとおり表も裏も花がモチーフとなっている。表は、極めて正統なデザインをお願いした。センターセコンドの三針で、ローマンインデックスにブレゲ青針である。ダイヤル中央は、結構な面積でハンドエングレーブされた花が浮き上がる。良く見るとムラっけもあるが、何百万円もする時計では無いし、まさに人が彫った一品モノという感じで私は非常に満足している。しかし、これがダメな人はダメだろう。そういう意味では持つ人を選ぶ時計かもしれない。彫りそのものは、手馴れておりソツが無い。
ハンドは先にも書いたが強烈な出来であり、ミニッツ・アワーとも先端はあくまで細くとがっており、ブレゲムーンの打ち抜きも完璧に繊細である。板一枚を打ち抜いた感じは全く無く、極めて立体的で、しかも例によって外端がダイヤル側に曲げてある。ミニッツハンドの長さも完璧で、ぴったりインデックスに届いている。センターセコンドもとても良い出来で、また長さもわずかにミニッツより長く、なんと言うかこの三本のハンドは色、形、長さとも完璧で三拍子揃っている。
FLICKER製のケースはSSだ。ギザベゼルで、スリーピースである。ケース本体はヘアライン仕上げで、ラグもクロノスイスのような形状でビス留めだ。非常にドイツ的である。シースルーのスクリューバックで、防水性も担保されているしまた外周に彫った文字がこれはもうウニュウニュといかにも手彫りで、なんか暖かい。
竜頭はタマネギを選択したが、クラシックなケースの形状とよくマッチしていると自分では思っている。巻きやすさは若干犠牲になった気はするが。
風防は、これがまた相当に出来が良く、Hentschelほど盛り上がっていないが絶妙にアールを描くドーム風防。光学的な素性も良く、しつこいが斜で見ても歪み無しで何の文句も無い。
総じて、この外装に文句をつける人はそうそういないだろう。

<Inside>
機械は、生粋のドイツ製ムーブメントであるPUW660である。自動巻きのPUW1560から自動巻き機構を取り去った手巻きという位置づけであろう。11.5リーニュの17石でパワーリザーヴは約40時間。PUW460や560はそっけないブリッジ分割であるが、これはなかなか流麗でちょっと変わった意匠である。そしてこれは私にとって始めてのフォンテンメロン輪列の手巻きである。この輪列はヲタ受けは悪いが、私はなかなか面白いと思った。ETAの機械は自動巻きだから全く見えない4番が良く見えるし、そのすぐ脇では6振動で脱進するガンギも良く見えるからだ。とにかくクルクル回る4番が真ん中というのは、スモセコ輪列の機械ばかり見慣れてきたなかにあっては非常に面白く感じた。この機械は自動巻きベースということで、機械ヲタからみれば鼻にもかけないようなものかもしれない。本来ローターの外端が回転するべき部分が段差になっているのがよくわかる。私はこの低くなっている部分に妻のイニシヤルを彫ってもらった。サンプルで送ったフォント、指定した位置まで完璧にリクエスト通りである。これによってなにか段差部分に理由を持たせようとしたわけだが、完全に自己満足である。
肝心の彫金はどうであろうか?私自身、エングレーブに関して、私はほとんど知識を持ち得ないので「あ~綺麗だな」と感想をもらす程度が関の山である。赤い穴石を花芯に見立てて花を展開したデザインは秀逸であると思うし、さらに機能には不必要なルビーを埋め込んでまで花いっぱいにしたというコンセプトは跳んでいて、吹っ切れている。もはやPUWの素性がどうとか、そんなことは関係ない方向で凄いのだ。色に関しては、この金色の部分はどうやっているのか全く分からず、Jochen氏に聞いてみようと思っている。
竜頭の巻き心地は良く、どちらかというと軽めである。巻きながら機械を見ると、当然ながら角穴車が丸穴車とともに回転するが、角穴車のエンジンターンドが効いており、なんか良い感じである。この角穴・丸穴車の一部が見えるのは、段差のあるムーブメント形状と一風変わったブリッジ分割形状のお陰である。
総じて機械は、今まで持っていたものとは明らかに系統の違うものであるが、非常に気に入っている。なにより一点モノだし、そのかっている手間が尋常では無いからだ。そしてかけられた手間にふさわしい見ごたえを持っている。

<Summary>
Benzingerは二年ほど前から非常に気になる存在であった。実物を持っているという人を全然知らなかったし(日本にあるのか?)、今回はほとんどWebだけの印象でオーダーに踏み切ったがとにかく想像以上に良い時計だと思った。Hentscelさん同様、人柄のよさがにじみ出ているまじめな時計である。このような時計師個人のキャラクターが反映されている時計と言うのは本当に持っていて飽きない。これもまた長きにわたって時を刻んでくれそうである。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年5月13日 (土)

FPJをじっくりと見て

少し前の話になるが青山のFPJに行って来た。H氏には大変良くしていただいて、じっくりと素晴らしい時計を見ながらお話しする機会を得た。同氏の博学には当たり前であるが恐れ入るばかりであり、かなりディープな話をお聞きすることが出来て非常にうれしいのである。

さてジュルヌの時計であるが、手巻きばかり三本、クロノメータースヴラン40,38mmとレゾナンスを見せていただいた。前者はやはり特異な機械で、テンワとダブルバレルしか見えない機械である。テンワとコックだけが見える脱進器周りは「ははあこれは出テンプか3/4プレート時代のデテントクロノメーターをイメージしたものだな」と思った。フリースプラングなので尚更である。ダブルバレル(の香箱車の一部)が見えるのは、3/4プレートで覆ってしまったらあまりに寂しいからか?とも勘ぐったが、この「ダブルバレル」をヒントにこの時計をどう解釈するか考えてみた。
ジュルヌ氏はこのダブルバレルを「トルクの安定化」のために採用したとのことである。ということは、古のコンスタントフォース機構である鎖引きの、フュジーホイールとバレルにも見たてることができるのではないか?と気がついた。精度の向上のためにはトゥールビヨンにルモントワール機構をつけてしまう人であり、古の懐中にも非常に詳しい同氏である。クロノメーターの呼称には並々ならぬ思い入れがあるはずだ。
そしてこの何の変哲もない三針時計ではあるものの、クロノメーターを名乗らせるにあたってはもちろん精度の向上を第一に、デテント時代の正真のクロノメーターのイメージをダブらせてこの意匠になったというのが私の解釈である。

言うまでも無くジュルヌ氏はフランス人である。フランス懐中といえばLe RoyやBreguetなわけであるが、このようなフランス懐中のイメージも入るのかと思いきや、私にはそのイメージはほとんど感じることが出来ない。これはまごうこと無く英国懐中へのオマージュであろう。
個人的には英国懐中大好きなので、いっそ3/4プレートでもいいかも?と思ってしまった。またコックも「いかにもコック」という形も悪くないのでは、とも思った。しかしそこはフランス人のセンスである。なんというかブリッジの形状が左右対称で流麗なのである。

ダイヤルは「ちゃんと彫った」(電気鋳造やプレスではない)ギョーシェとのこと。素晴らしい出来である。とはいっても素人では製法の差などどんなに目を凝らしても判るはずもないのは承知のうえである。ハンドは全部ブルースチールであり、特にミニッツハンドの細さはなかなかである。この針の形状は本当に人の好みに左右されるところで、これがダメならFPJの時計は全部ダメだろう。アラビア数字はスモセコのかかる部分は大きさを替えてあるが、個人的には欠けても良いから同じ大きさのほうが好み。またロゴも正直少し大きすぎるかも、と思った。古の英国懐中のような恐ろしく控えめなのも良いものである。ただ全体のデザインや針はかなり主張する時計なので、ロゴもこのくらい主張したほうが良い
のかもしれない。なおインデックスの塗りの盛り上がりは強烈である。ケースは、これはかなり素晴らしい。量産型の時計としては出色の出来だと思った。竜頭のデザインはこれも好きずきであろうが完全にFPJのアイデンティティとして確立している。

総じて、歴史や思想を感じさせる素晴らしい機械を、FPJならではのガワで包んだ類まれなるタイムピースであろう。個人的には38mmのRGがベストである。(なぜPtじゃないの?と聞かれれば、変に原理主義的な私は時計のケースは古来よりゴールドで、Ptは最近の邪道だと思うからだ。貧乏だというほうが大きいのが実態だが。)

レゾナンスについてはもはや凄すぎてよく分からないのが正直なところ。私ごときではその凄さを理解しきれない。例えもし買えたとしても宝の持ち腐れになりそう。日差六秒以内じゃないとレゾナンスしないとか、いやはや凄すぎ。機械はこれこそ左右対称で、全く隙が無い。仕上げももちろん綺麗であるが、シンプリやHentschelと比べると多少工業製品然としているか。ただし品質の安定性などは素晴らしいのであろう。このダイヤルはオクタ系にも通じる純FPJ風。針もケースも竜頭もなにもかもこれぞFPJ。Roger SmithのSeries2買うかこっちか、なんて贅沢な悩みをしてみたい。ちなみにSeries2はまだ一本もデリバリーしていないはずで、なんかフィスコシル状態。
そういえばH氏との話の中でシンプリが全然出てこなかったのはあとで考えるとちょっと意外であった。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2006年5月12日 (金)

「うまい」という表現

時計業界に長年関わられている方に、Hentschel H1を見ていただいたら「うまいですねえ」という言葉を頂いた。しかも全く違うお二方からである。
「うまい」という言葉は、私のような素人には想像もつかない表現であった。これは長年たくさんの逸品を見続けてきたからこそ出てくる表現であろう。ちなみに私の時計に対する表現は、せいぜい「良い」か「悪い」か、「好き」か「嫌い」かくらいである。
そしてもちろん「上手い」の反対は「下手」である。上手いか下手かというのは、その時計師の技量を評価しているわけで、この場合H1という時計を通してAndreas師の腕を「上手い」と評価していることに他ならない。この前提として、時計が個人の時計師の作品であり(あるいはかなり独立性を持ったメゾンであること)、かつ手作業により製作されている時計でないとこの上手いか下手かと言う評価軸には乗って来ないわけである。
そういった意味で「上手い」という表現・評価が出来る方は、凄いと思った次第。そういう個人の手作業レベルのたくさんの時計たちを見てこなければ、そしてその時計そのもの、材料や製作過程などに精通していなければ決して言えない言葉であると思ったのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年5月 2日 (火)

カフリンクスの話

T.M.Lewinのカフリンクスを買った。
a師より頂いたメールオーダーカタログを見ていて欲しくなったからで、買ったのは写真の通り。
Tmlewin ラベンダー色のは女性でも使えるもの。右はスターリングシルバーに真珠母貝で、あとは円筒型のノット。やはりこういう極めて英国的センスのモノは国内で探すと本当に無いし、あっても不当に高い。多分これの購入価格はたいていの人が聞いたら腰抜かすくらい安い(セール利用で)。
そもそも英国本来のシャツの形式は、ダブルカフスに胸ポケット無し、これが基本である。もちろんオーダーすれば作れるが、この手の既製を国内で探すと、まずほとんど無い。以前百貨店で胸ポケット無しでオーダーしたら「無しですか?」みたいに確認されたし。
で、カフリンクスである。私はよくある「バーを挿して90度に回して留めるの」があまり好きではなく(いくつか持っているが)、可動部が無くソリッドのものか、この鎖のモノが好みである。特に後者は、なんというか袖口の合わせ目が微妙に開き、非常にエレガントに動く。ま、事務作業には全く向かないのだが、とにかくエレガントなわけであり、月曜日にネイビーストライプスーツを着てこういうものをつけると気合が入るのである。
ま、所詮自己満足なのである。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

« 2006年4月 | トップページ | 2006年6月 »