« 「うまい」という表現 | トップページ | BENZINGER »

2006年5月13日 (土)

FPJをじっくりと見て

少し前の話になるが青山のFPJに行って来た。H氏には大変良くしていただいて、じっくりと素晴らしい時計を見ながらお話しする機会を得た。同氏の博学には当たり前であるが恐れ入るばかりであり、かなりディープな話をお聞きすることが出来て非常にうれしいのである。

さてジュルヌの時計であるが、手巻きばかり三本、クロノメータースヴラン40,38mmとレゾナンスを見せていただいた。前者はやはり特異な機械で、テンワとダブルバレルしか見えない機械である。テンワとコックだけが見える脱進器周りは「ははあこれは出テンプか3/4プレート時代のデテントクロノメーターをイメージしたものだな」と思った。フリースプラングなので尚更である。ダブルバレル(の香箱車の一部)が見えるのは、3/4プレートで覆ってしまったらあまりに寂しいからか?とも勘ぐったが、この「ダブルバレル」をヒントにこの時計をどう解釈するか考えてみた。
ジュルヌ氏はこのダブルバレルを「トルクの安定化」のために採用したとのことである。ということは、古のコンスタントフォース機構である鎖引きの、フュジーホイールとバレルにも見たてることができるのではないか?と気がついた。精度の向上のためにはトゥールビヨンにルモントワール機構をつけてしまう人であり、古の懐中にも非常に詳しい同氏である。クロノメーターの呼称には並々ならぬ思い入れがあるはずだ。
そしてこの何の変哲もない三針時計ではあるものの、クロノメーターを名乗らせるにあたってはもちろん精度の向上を第一に、デテント時代の正真のクロノメーターのイメージをダブらせてこの意匠になったというのが私の解釈である。

言うまでも無くジュルヌ氏はフランス人である。フランス懐中といえばLe RoyやBreguetなわけであるが、このようなフランス懐中のイメージも入るのかと思いきや、私にはそのイメージはほとんど感じることが出来ない。これはまごうこと無く英国懐中へのオマージュであろう。
個人的には英国懐中大好きなので、いっそ3/4プレートでもいいかも?と思ってしまった。またコックも「いかにもコック」という形も悪くないのでは、とも思った。しかしそこはフランス人のセンスである。なんというかブリッジの形状が左右対称で流麗なのである。

ダイヤルは「ちゃんと彫った」(電気鋳造やプレスではない)ギョーシェとのこと。素晴らしい出来である。とはいっても素人では製法の差などどんなに目を凝らしても判るはずもないのは承知のうえである。ハンドは全部ブルースチールであり、特にミニッツハンドの細さはなかなかである。この針の形状は本当に人の好みに左右されるところで、これがダメならFPJの時計は全部ダメだろう。アラビア数字はスモセコのかかる部分は大きさを替えてあるが、個人的には欠けても良いから同じ大きさのほうが好み。またロゴも正直少し大きすぎるかも、と思った。古の英国懐中のような恐ろしく控えめなのも良いものである。ただ全体のデザインや針はかなり主張する時計なので、ロゴもこのくらい主張したほうが良い
のかもしれない。なおインデックスの塗りの盛り上がりは強烈である。ケースは、これはかなり素晴らしい。量産型の時計としては出色の出来だと思った。竜頭のデザインはこれも好きずきであろうが完全にFPJのアイデンティティとして確立している。

総じて、歴史や思想を感じさせる素晴らしい機械を、FPJならではのガワで包んだ類まれなるタイムピースであろう。個人的には38mmのRGがベストである。(なぜPtじゃないの?と聞かれれば、変に原理主義的な私は時計のケースは古来よりゴールドで、Ptは最近の邪道だと思うからだ。貧乏だというほうが大きいのが実態だが。)

レゾナンスについてはもはや凄すぎてよく分からないのが正直なところ。私ごときではその凄さを理解しきれない。例えもし買えたとしても宝の持ち腐れになりそう。日差六秒以内じゃないとレゾナンスしないとか、いやはや凄すぎ。機械はこれこそ左右対称で、全く隙が無い。仕上げももちろん綺麗であるが、シンプリやHentschelと比べると多少工業製品然としているか。ただし品質の安定性などは素晴らしいのであろう。このダイヤルはオクタ系にも通じる純FPJ風。針もケースも竜頭もなにもかもこれぞFPJ。Roger SmithのSeries2買うかこっちか、なんて贅沢な悩みをしてみたい。ちなみにSeries2はまだ一本もデリバリーしていないはずで、なんかフィスコシル状態。
そういえばH氏との話の中でシンプリが全然出てこなかったのはあとで考えるとちょっと意外であった。

|

« 「うまい」という表現 | トップページ | BENZINGER »

コメント

FPJ氏本人の話では、やっぱりスヴランは英国懐中ではなく仏蘭西懐中の対称性がモチーフとのことだそうです。私の解釈はやっぱり間違っていましたスマソ。

投稿: レベルソ好き | 2006年6月23日 (金) 22時40分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/160208/10052737

この記事へのトラックバック一覧です: FPJをじっくりと見て:

« 「うまい」という表現 | トップページ | BENZINGER »