« 2006年3月 | トップページ | 2006年5月 »

2006年4月29日 (土)

ストライプスーツの話

ストライプスーツは、恐ろしい。何が恐ろしいかというと、手間ひまをかけたものかどうか、簡単に分かってしまうものだと思うからだ。どういうことかと言うと、柄合わせだけでもそれが分かってしまうということである。
下に三つのストライプスーツの写真がある。
Stripes

左と真ん中はChester Barrie(25万円クラス)であり、右は7〜8万円クラスのパターンオーダーで、比較的評判の良いそこそこ有名なブリティッシュブランドである。

さて何が違うかというと、もう一目瞭然ストライプの柄合わせのレベルが全く違う。Chester Barrieのスーツは、いずれもストライプ幅が1.6cm程度のものであるが、フロントダーツにストライプの一本が消えていって、ポケットのフラップまでの間に完全にもとの幅にそろっていて、そのまま別パーツのフラップの上を通り裾まで完璧にラインがそろっている。それはもう見ていてほれぼれするほどに完璧である。このブランドのスーツは、この形に限っていえばフロントのダーツ幅がほぼ1.6cm取られている。すなわち、ストライプ幅1.6cm程度の生地を選んで作れば、このように完全に柄合わせされたスーツがオールハンドの工程により必然的に出来上がる訳である。
対して右の例。ストライプ幅は1.2cm程度であるためダーツ幅と合ってはいないが、ダーツの先のチェンジポケット、その先のポケットのフラップのラインがかなりガチャガチャである。決して悪い作りのスーツではないが、マシンメイドではこの程度、ということであろう。
要するに、ストライプスーツは、ある程度見てしまうとどこまで手間ひまをかけて作られたスーツかということが、見た目で分かってしまうものなのである。冒頭ストライプスーツは恐ろしい、と書いたのはそういう意味だ。
なお、上記の理由で私はストライプのスーツは、ダーツ幅に合った(今回の例であれば1.6cm、半分の8mmであってもやはり完璧な柄合わせが期待できるであろう)ストライプ幅を選ぶのである。どうでも良いこだわりかも知れないが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年4月 6日 (木)

ことしのBASEL/SIHHの傾向

などと大それたタイトルをつけてしまったが、スイスに行けるわけも無くwebの情報を頼りに思ったことをつらつらと書かせて頂く。

そういえば新年度初めての更新であるが、実は個人的にはこの四月に異動したため職場環境がガラッと変わり、この一週間のストレスは大層なのである。部下の人数が一気に数倍になったし(断っておくが偉くなったのでも給料が上がった訳でもない。なので時計を買う原資は相変わらずホソボソなのだ)。なのでこの文章を書きなぐっていることはその発散も兼ねているわけで、読んでいただいている皆様には大変申し訳ない。

さて今年の傾向、それはなんと言っても脱進機の進化である。去年、PPはシリコンガンギの限定アニュアルを出した。それ自体は全く欲しいとは思わなかったが、今年は同様の時計が随分と発表された。UNの160周年モデルも完全新開発の自動巻きにシリコンガンギを搭載してきた。AP(パピ)はやっぱり凄くて、平ヒゲを対称に重ねて搭載した。ご存知の通り平ヒゲのカウンターポイントはヒゲの収縮に伴い天真の位置が変わる、すなわち天真には側圧がかかることだが、これが必然的に解消されることが凄いと思った。ブレゲヒゲよりもより正確に側圧が取れるであろう。さらに驚いたのがライトアングルレバー(London Patent Lever Escapement)になっており、振り座に爪石がついててやはり一往復で一回脱進するもの。クロノメーター脱進器に近く、さらに本物のクロノメーター脱進器は提灯ヒゲであるが、これが非常に姿勢差が大きく、一方今回の重ねた平ヒゲはいかにも姿勢差に強そうである。興味があるのはそれぞれのヒゲは、ある程度巻き込んだ状態で平衡状態にしているのか(主ぜんまいがほどけきった状態で、ヒゲぜんまいにはプレストレスがかかっているのか)、ということ。
さて次はPP、例の一体成形ヒゲであるSpiromax。方向性としては正しいように思うし、その製造精度はいままでバネを巻いていたものに比べ材料的にも形状も比べ物になら無いであろうことは容易に想像できる。軽いし、非磁性体で熱影響もほとんど無い。等時性の保持にはいままであった中でも最高の部類だろう。あとは、これが好きかどうかだけである。これは、TSS師も書かれている通りSwiss Centre Suisse d'Electronique et de Microtechnique 株式会社 (CSEM)からみであろう。もちろんフリースプラング。
参考資料:http://www.nistep.go.jp/seminar/013/013_e_2.pdf

さて次。JLCの75周年スーパーコンプリ三面レベルソのellipse isometer escapement。
未だ良く分からんが、どうやらクロノメーター脱進器のように一往復で一回脱進するそうな。ガンギもシリコンのフリースプラングのモヨリ。
ということで、各社脱進器の改良にいそしんでおり、シリコン、フリースプラング、レバー脱進器ではあるがクロノメーター脱進機に回帰しつつある?というのがなんとなく総括的な流れかと。この勢いで来年はスプリングデテントの腕時計が出ないかな?と期待。意匠はローマン、極細スペードハンドのポーセリンで巨大スモセコのまんま懐中みたいな顔のやつ。

閑話休題。なんでこの時期にいっせいに、というのは、ETAのパーツ供給停止の発表を受けてヒゲその他のパーツの自社調達を考えるようになった、その流れのなかで生まれてきたのであるという勝手な予想。もしそうなら、ETAの発表は機械式時計を新しいステージへと導くものとなったとも言える。
さてもう一つ、これはスイス人ひっくり返ったであろう世界のSEIKO12振動。いや〜凄い。詳細な資料が待たれる!
最後に、新素材、新脱進機とは全く別のステージで衝撃だったリヒャルト・ランゲ。こういう手巻き三針を今出すか!と。ブリュムラインの意思は引き継がれているな、と思った次第。この大きさのテンワを持つ堂々とした大きさの、ただの手巻き三針。この出車のブリッジの意匠には正直もうメロメロ。いや、スモセコ大好きだがこれは別格。もう少しケースが小さければとは思うがこの機械の大きさに合っているし、それがこのデカさならなんの文句も無い!ダイヤルのローマンは、端正で超好み。ヘンリーモーザーにも萌えるがこのランゲもまじでヤヴァイ。

そのほかの新製品でもいくつか興味のあるもの、なかなか良いな、と思ったものもあるがとりわけ気になったのは以上である。例年に無く面白い2006年春であった。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2006年3月 | トップページ | 2006年5月 »